
ヨゼフとその兄弟たち 2
(トーマス・マン全集 X) 新潮社 1979 初版1972
旧約聖書の族長物語中でもっとも劇的なエジプトのヨゼフの生涯を描く。
後にイスラエルの十二支族の祖となる兄弟たちの中でただひとり数奇な運命
をたどり、さまざまな人間相克の中で絶対者の意志と導きを見出していくヨ
ゼフである。旧約の物語のヨセフのストーリーは時間を追って記述されて一
族長の家族の生活の記事から民族の栄光の記録へと内容の質が変化しているのに対して、
これは小説であり、しかもジイドのいうロマンに近い作品であって、実に克明に人物の性
格の意味、事件とそれにかかわった人間たちのたどる運命の意味を描き出そうとしている
のである。それがある時には執拗にすぎるほどの記述になるため読んでいて息苦しくなる
ほどであるが本を下に置くことができないのは何故だろう?。