
私の敬愛する人びと 武田清子 近代文芸社 1997
その人が同時代人であれ、または過去の人であれ尊敬し、深く傾倒する人
はいるものである。それはこの本の著者のいう敬愛する人ということとは意
味が違うのかも知れない。テーマとした人物を評伝的にとり上げるならばそ
れは尊敬しているとは言えるだろうが、傾倒しているとは言えないからであ
る。その場合はとり上げた人物について語りながら、実は自分の考え方を述
べようとしていると思われるからである。ある意味ではそれは当然のことなのだが、しか
し、正直なところ私としてはやはり、その人物の声が響いてくるような内容であって欲し
いと思う。アイヌの人権を真剣に考えていたジョン・バチェラーについての記述を読んで
いたら、自分でもこの人の生き方に以前から傾倒するところがあったのでなおさらそう感
じたのだった。