
流れのほとりにて(森有正全集 1) 筑摩書房 1978
著者没後間もなく出版された最初の全集である。その前に単行本として世
に出ているものもあるのでその何冊かは読んではいたが、なにしろ難解でこ
のように言葉をつむいで行くエネルギーはもの凄いと思った。全集が手もと
にあると何となく横着になって時々気が向くと取り出して拾い読みをすると
いう体たらくである。しかし、そのような読み方をしてもひと時澄んだ空気に触れて生き
返ったようになるから不思議だと思う。もちろん、パスカル研究などの本格的な著作は恐
れ多くてそんな不遜な読み方はできないので、読みかじっては早々に棚に戻す、つまりは
敬して遠ざかるのである。この巻を含め数巻はエッセー風であったり、日記調であったり、
時事問題評だったりするのでそれは楽しんで読む。こんな愛読者もいていいのではないか
と勝手に言いつのっているのである。