
ランボー全集 訳 金子光晴他 雪華社 1970
ランボーには不思議な魅力がある。早熟の天才というものは往々にしてあらわ
れるけれども、ランボーもその稀な存在の一人であることは誰もが認める。ほと
んど少年といってもいい年齢ですでに成熟した思想を持ち得たということがすで
に恐るべき天才だった。仏蘭西文学史に大きな足跡をしるし、しかも二十歳を過
ぎると実生活の彼方へ去ってしまう。最後にはアフリカの小村で死の病にとらわれるまでのそ
の短い生涯は何という生のよろこばしさをわれわれに示してくれることか。その詩と生がこの
ようにわれわれを引きつけて離さない詩人には国境がないのだ。ランボーもマヤコフスキーも
ロルカも高みにあってわれわれを常に引き上げてくれるのだ。