
回想記・内面の旅路−自伝−(ロマン・ロラン全集 17) みすず書房 1980
すぐれた記録を残した人々にわれわれは感謝しなければならない。個人的な回
想の形で書かれたものでも時代の証言として真実をわれわれに告げてくれるから
である。ロランの分厚い回想記と日記とがそうした意味を持った貴重な歴史的記
録としてわれわれの前にある。精神に国境を持たなかったロランは地球上のどこ
で起こったことであろうと人間の尊厳を踏みにじるどのような不正をも見逃さず、容赦しなか
った。フランス国内においてはドレフュース事件、外においてはアルメニアの大虐殺、それに
続く第一次世界大戦のあらしの中で人間の理性の覚醒を呼びかけ続けたのだった。