
ベートーヴェンの生涯(ロマン・ロラン全集 14) みすず書房 1981
この巻にはベートーヴェン、ミケランジェロ、トルストイ、ミレーとそれにガ
ンジーの5人の評伝が収められている。ともに自らの苦闘の生涯をとおして人類
に勇気と希望を与えた偉大な魂の人である。ロランは序文の中で書いている。
「善のために悩んだ偉大な魂の人々、雄々しい友らの一群を人々の周りに据えよ
うと私が企てるのは人々に助力を与えるためである。卓越せる人々の生涯のこの一群は、野心
家たちの慢心へ語りかけるためではない。これらの伝記は不幸な人々に捧げられる。しかも詮
じつめればいったい誰が不幸でないであろうか?悩める人々に、聖なる苦悩の香油を捧げよう
ではないか。われらは戦いにおいて孤独なのではない。」云々と。ジャン・クリストフや「魅
せられた魂」の雄々しい女性たちの烈しい生き方を私達はここに再び見出す。