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       奄美南限の薬用植物

「耐えて春を待つ」では奄美北限の蝶を紹介したが、今回は奄美南限の薬草を紹介したい。
「センブリ(千振)」がそうである。1字聞き違えると全く意味合いが異なってくるので話題に
するときは発音をはっきりと。健胃、整腸の生活薬草である。
とにかく苦い!千回煎じてもなお苦さが残るところに名前の由来がある。
海岸近くのやせた丘陵地に穏やかな陽光を浴びながら閑かに紫の筋のはいった
白い花を咲かせる。常に風に吹かれ小刻みに揺れる様は、彼女を知ればこそ
愛らしくもあり人目についてほしくもなく、両手に包みたくもなる。
先の人たちが残した貴重な経験とそれを物も言わず支えてきた彼ら。
今、彼らの住むところが人の生活のために狭められている。見かけたら、彼女がそうかと、
手を添えてあげる、それだけでもいい。
が、案ずることはない。少なくとも人間の数千倍の生き抜く力と術を彼らは心得ているから。

                                              2002年2月7日        奄美大島 橋本