向日葵
「う・・・ん、ここは?」
フィツは起き上がると辺りを見渡した。太陽の光がまぶしい。
「あれ?他の皆はどこ行ったんだろう」
妖精であるフィツは特別な理由が無い限り、めったに妖精界から出たりしない。他の皆だってそうだ。それなのに皆の気配がしない。まさか寝ている間に何かあったのかな・・・。
(ガサガサ)
その時近くの草がゆれた。
「だ、誰かそこに居るの?隠れてないで出てきてよ」
フィツはそーっとゆれた草に近づいた。
「にゃーーー」
「うわああああああ!!」
そこから出てきたのは猫だった。ど、どうして猫がいるの?なんか目つきが怖い・・・。
「こんにちは、猫さん。僕に何かご用?」
「にゃああああああ」
「ぎゃああああああ!!たーすーけーてーーー!!」
猫の攻撃をかわすとフィツは勢いよく逃げ出した。猫の攻撃が届かないくらい高く飛んで、さっきいた場所からかなり離れた場所まで飛んで行った。
「ここまでくれば大丈夫かな・・・・・・」
空を飛びながら下を見ると、そこには今まで見た事の無い人間がたくさんいた。フィツは確信した。間違いなくここは人間界だと。それにしてもどうやってここまで来たんだろう。
飛ぶのに疲れたフィツは大きな花の上に止まった。その花の上からは太陽がとてもよく見える。
「どうやったら帰れるんだろう。そもそも僕、帰れるのかなあ?」
だんだん不安になってきた。どうやってここまで来たかも分からない僕に帰る方法が分かるはずもない。
「お母さん、あの花の名前って何ていうの?」
「ああ、あれは向日葵っていうのよ」
「に、人間さんだ!隠れなきゃ」
フィツは向こうからやってくる母子に見つからないように大きな花の後ろに隠れた。
「ひまわり?」
「そう。向日葵の花はね、太陽に向かって咲いてるの。だからあんなに大きくて力強く咲いてるのよ」
「ねえ、お母さん。もっと近くで見てきてもいい?」
「ええ。気をつけてね」
女の子はフィツの隠れている花の方に走ってきた。
「人間さんが近づいてくる。どうしよう・・・。でも今動くと見つかっちゃうかもしれないし」
迷っている間に女の子はフィツの隠れている花の前に来ていた。
「うわぁ、おっきな花。きれーい」
フィツは近くで聞こえる人間の声にビックリした。でもそれ以上に人間の声が優しいことに驚いた。
「ねえ、お母さん。この花ちぎって持って帰ろうよ」
「駄目よ。花だって一生懸命咲いてるんだから、簡単にちぎったりしたら花が可哀想でしょ?」
「・・・・・・はあい」
「いい子ね、ペチカ」
フィツはこっそり花の後ろから覗いてみた。すると、そこには女の子の幸せそうな笑顔があった。
「またね。バイバーイ」
女の子はそういうと母親の方に走っていった。そして手をつなぐと、仲良く帰っていった。
「あの子・・・・・・」
フィツはもう一度花の上に止まるとさっきの女の子の笑顔を思い出した。その笑顔はフィツが今まで生きてきた中で見た、一番綺麗なものだった。
「人間さんって・・・・・・いい人なんだ」
花の上から見る太陽はさっきよりも明るくて、暖かく感じた。そのまま目を閉じてしまおうと思った瞬間・・・・・・
「にゃああああああ」
「うわああああああ!!またでたあああああああ!!」
フィツはさっきより高く高く飛んだ。そして・・・・・・
「おい、こんなとこで何してるんだ?」
「う・・・んん・・・」
「おーい、起きろよ。起きろってば」
「んー、・・・ヴォー?・・・・・・あれ?猫は」
「猫?何寝ぼけてんだよ。まだ夢の中なのか?」
フィツは起きあがると辺りを見渡した。そこには自分と同じ妖精がたくさんいる。
「夢・・・・・・?だったのかな」
「おいおい、本当に大丈夫か?」
ヴォーは少し心配そうにフィツの顔を覗きこむ。しかしフィツはまだ考え込んでいるのか難しい顔をしている。
と、そこにヴォーが飛び蹴りをくらわした。
「何するのさ!!」
「おー、目は覚めたみたいだな」
「とっくに覚めてるよ。それよりどうして蹴るのさ」
「お前が無反応だからだろ」
そういうとヴォーはさっさと逃げた。フィツは後を追いかけようと立ち上がり、ふと空を見た。太陽はあの子の笑顔みたいに綺麗だった。