昔に比べていくらか背が伸びた青年、ルージャンは約束の場所へ急いで向かっていた。
パーパスの街も復興し、活気にあふれてきた。あれから5年。子供だった俺たちが大人の仲間入りをした。その間色々なことが変わった。一番変わったのはペチカだと思う。アイツに会うたびに昔の、たぶん母親が生きてたころのアイツになっていったんだと思う。なにより笑顔が増えた。そんな姿を見ていると、嬉しいと思う反面、不安と焦りが生まれてきた。どんどん優しく、綺麗になっていくアイツを他の男(ムシ)がほかっておくとも限らない。それに俺はアイツをいじめていた人間だ。そんな気持ちを持ってもアイツに認めてはもらえないだろう。
考えないようにしていたことー(ペチカは俺のことをどう思ってるんだろう・・・)
気づくと足はどんどん遅くなっていった。悪いことばかり考えてしまう。目的地まで後少しという所で足が止まってしまった。
「どうしよう・・・」
その時500レプの鐘の音が聞こえた。
「やっべぇ、時間!」ルージャンは一度考える事をやめて、慌てて約束の場所まで走っていった。
「ごめん!!遅れた」
「ううん、大丈夫。そんなに遅れてないよ」そういうとペチカは少し笑った。
「でも、遅れるなんて珍しいね。何かあったの?」
心配そうな顔で聞いてくるペチカに、遅れた理由など話せる訳がない。しかしペチカに嘘をつく訳にもいかない。少しの間悩んだ末、正直に話すことにした。
「・・・実は、さ、考え事をしてたんだ」
「考え事?」
「俺たちがこうやって話したり、会ったり出来るのは全部フィツのおかげだろ?それにこの5年の間、ペチカは凄く変わった。なのに俺は?あの頃から何が変わった?」
「・・・・・・」
「俺は自分で自分に自信が無いよ。ペチカに、他の人に誇れる自信が・・・」
「でもさ、ルージャンが5年前私を探しに来てくれなかったら、こうして会うことも、話すことも出来なかっただろうし。それにあの時、ルージャンが助けてくれたからこうして私たちがここにいるんだと思うよ」
「ペチカ・・・・・・」
「それにね、先に変わったのはルージャンの方だよ」
「俺が?」
「うん。ルージャンも知らない場所で頑張ってるんだ。って思ったら、私ももう少し頑張れたから。でも、私変わったかなぁ?」
不思議だな。ペチカが言うと何でも本当の事に聞こえてくる。目の前にいる彼女にはきっと、いつまでたってもかなわない。
「ねぇ、私のどこが変わったの?」
その問いには答えず、代わりに優しく抱きしめる。辺りは暗くなりはじめていた。
「ルージャン?」ペチカが腕の中で驚いた声を出した。
「なぁ、ペチカ。ペチカは俺のこと、どう思ってる?おれはオマエをいじめてたし、喜ぶようなこともしてないし、それに・・・」
ふと胸に熱いものが溢れてきた。それを隠すかのようにペチカの肩に顔をうずめる。
「ルージャン?どうしたの?」
「・・・・・・嫌い、でもいいんだ。ただ、ペチカの、オマエの気持ちが聞きたいんだ・・・・・・」
辺りはすっかり暗くなり、二人しかいないその場所に少し沈黙が訪れた。空にはすでにたくさんの星が輝いている。その沈黙を先に破ったのはペチカだった。
「わた、しは・・・ルージャンに、感謝してるよ。私をいじめてた事はもう気にしてないし。それに、フィツがいなくなって悲しんでた私を誰よりも元気付けてくれた。嫌いだなんて思ってないよ」
そう言うとペチカはルージャンの背に自分の腕を回した。そして優しく抱きしめ、眼を閉じた。
「私は、ルージャンが優しさで暖かいことを知ってるよ。私はその暖かさ、凄く・・・好きだな」
ルージャンは今までよりきつく抱きしめた。どうして、ペチカはこんなにも俺を喜ばせることがうまいんだろう・・・。本当にペチカには一生かなわないかもしれない。
いつの間にか600レプを大分過ぎていた。二人は手をつないで、ペチカの家へ向かっていた。その間、ルージャンは困っていた。どうしてあんな行動をしてしまったのか、今考えても恥ずかしくて逃げ出したくなる。でも言って良かった、とは思う。それに嬉しいことを聞いた。もちろんペチカの言った『好き』と、俺の『好き』は違うだろうけど。
あと少しでペチカの家という所でルージャンは足を止めた。言わなきゃいけないことがある。まだ伝わらなくてもいい。そう思って、ペチカのほうを向いた。
「あのさ、今日はありがとな。それと、俺前からずっとペチカのこと好きだから。・・・・・・また、お店に行くよ。じゃあな」
そういうと全速力で走り出した。なんだか今日は恥じをかいてばかりいる。でも、こんな日もいいか。とりあえずは一歩前進した訳だし。
なぁ、フィツ。見てろよ?絶対ペチカを幸せにしてやるからな!!!
小動物さん、頑張るルージャンとかっこいいペチカのお話を有難う御座いました。